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合格めざして「ベクトル」を上向きに調整しよう

入試に「番狂わせ」というものがあることは事実ですし、
意外な結果というのもまったくないことではありません。
それはそうなのですが、
長いあいだ子供たちを見てきていると、
年の明けた一月頃には、
ほぼ正確に受けもっている子供の合格・不合格が判断できるものです。
「なんで、あの子が落ちたんだ!」
あるいは、「受かるはずのなかったあの子がうかってしまった!」
というように、心底びっくりするような結果が出ることは、ほとんどないのです。
わたしたちは、一月頃の時点で子供たちの「ベクトル」が上向いているか
下を向いているかを見ます。
すると、その子が合格ラインを越えられるかどうか、
だいたい予測がつくのです。
aはじゅうぶんに余裕のあるタイプです。
学力も高く、成績が安定しています。
精神的にも自立できていますから、
こういう子供は入試本番でも危なげなく
自分の実力を発揮してゆうゆうと合格ラインを越えていきます。
ただし、中学受験ではこんな子はそうたくさんはいません。
bはもともと高い学力をもっているはずなのに、
なんらかの理由で受験の直前になって
ガタガタとペースを崩していってしまうケースです。
その原因はスランプだったり、強いマイナスイメージだったり、
さまざまですが、直前で失速して「ベクトル」が下を向いてしまっています。
受験生でいちばん多いのがcのタイプです。
80パーセントくらいの受験生はこのタイプに入るのではないかと思います。
夏休み前から成績が上がったり下がったりしながら推移してきていて、
夏休みを過ぎたあたりから猛然とスパートをかけ、
強い上昇エネルギーにのって合格ラインを突破していきます。
一月のあたりに、
たてのラインを引いてみたとき、
「ベクトル」が上向きになっていてしかも合格ラインを越しそうなら、
その子は合格の確率がひじょうに高いのです。
dのタイプのように、ほとんどcとおなじようにきていながら、
お尻に火のつくのが遅かったせいか、
もう少しのところで合格ラインを越しそこなう場合もあります。
「ベクトル」が上向きなだけに残念なケースですが、
入試の日に「間に合わせる」ということも受験の大事なポイントです。
最後のeは、中学受験についての動機づけや
目的意識のあたりからうまくいかなかったケースということになるのでしょう。
こうして見てみると、入試直前の子供たちの「ベクトル」が、
学力の上でも気持ちの上でも、
とにかく上向きになっていることがどれだけ受験で大きくものをいうかを、
あらためて感じます。
とくに中学受験は、大学受験や高校受験と違って、
十二歳というまだ低い年齢の子供たちの受験です。
それだけに心理的なものが結果を大きく左右する傾向も強いのです。
この時期、子供の「ベクトル」をしっかりと上向きにもっていくためには、
「この中学校に入りたいんだ!」という子供の気持ちを先頭に立て、
努力すれば必ず受かるという強いプラスイメージを維持させていくことがひじょうに大切です。
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「図太い子」は、とことん入試に強い

入試本番の試験会場の雰囲気は、子供にとっては想像以上に
プレッシャーのかかるものです。
ふだん、塾や模擬試験の会場でテストを受けるときは、
自分がいて友達がいて、そこに答案用紙が配られます。
どんなに真剣にテストに取り組むとしても、
「これは模擬試験だ」という気持ちが、
ちゃんと頭の中にインプットされていますから、
本番のようにあがったりは絶対にしません。
ところが入試本番では、友達からも、お父さんやお母さんからも離れて、
なじみのない中学校のシーンと静まり返った教室のなかで、
ひとりで座っていなくてはなりません。
横目でちらりとうかがえば、
まわりはみんなできそうな顔をした子供ばかりです。
泣いても笑っても、この数時間なかりは、
自分ひとりの力で戦い抜かなければならないのです。
十二歳の子供たちのほとんどにとって、
入試は生まれて初めて経験する孤独で厳しい戦いです。
この緊張の数時間に、子供たちがふだんどおりの力を出せれば、
いや、ふだんの七、八割の力が出すだけで
合格ラインにじゅぶんに達するはずなのです。
しかし、これが意外に至難の業です。
どうしてもミスをしたり、
いつもは簡単に解ける問題が難問に見えたりしてうまくいきません。
こうした入試本番に、
子供たちがどれくらいプレッシャーを受けるかということについて、
実験をしてみたことがあります。
まず、ある中学校の入試問題から、算数の問題を選び出します。
われわれ指導員が分析してみて、
「これは、かなり難しい出題だ」というレベルの問題です。
その問題については、
学習指導会から受験した六年生たちがどれくらい正解できたかデータをとってあります。
さて、そのまったくおなじ問題を、
五年生のクラスにもっていって、いきなりやらせてみます。
結果は、なんと一年下の五年生たちのほうが、
六年生が入試会場で取り組んだ結果よりもよい成績なのです。
なぜこんな結果になるのかといえば、
五年生たちはその問題を、いつもの学習指導会の教室でなんのプレッシャーもなく、
リラックスした状態でやったからです。
「なんだか難しそうな問題だけど、おもしろいから解いてやれ!」といった、
ほとんどゲームのような感覚で問題に取り組めば、
五年生でも意外にそうした難問を解いてしまったりするわけです。
これは大人でもおなじことで、
「十分でこの問題を解いてみて」と時間を制限されると、
きばかりあせって頭が空回りしてしまいますが、
自分で楽しみながら解くぶんには五分もかからなかったりします。
毎年入試を終えて、教え子たちの合格・不合格をチェックしてみると、
あらためて感じることがあります。
次々に敵をなぎ倒すように合格する力強い子。
こんな子供たちの共通点は、「図太さ」という一語につきます。
入試が始まる二月一日からの一週間は、
まさにこの「図太さ」が何よりも強い味方です。
平然と、ふだんとおなじペースでやり通す子は、とにかくよく合格します。
一方、ふだんの力が発揮できなかった子もいます。
この子たちに比較的共通しているのは、
やさしく思いやりのある、とにかく「良い子」だということです。
心のやさしさ、他人への思いやり。
これは、人間としてもっとも大切な美質です。
しかし、入試の場ではそうした美質が役に立たないことが多いというのは、
なにか皮肉でとても残念なことのように思えます。
「ていねいさ」と「確実さ」が合格を勝ち取る

四年生のときに学習指導会に入会した男の子で、
いつもあわてることがなく、感情をあまり表に出さない、
Y君というマイペースの子供がいました。
彼は算数をやっても国語をやっても、いつも半分もこなせず、
さらに授業では、他の子供が答えを出し終わっていても、
まだ問題を書き写しているような子供でした。
このように万事ゆっくりしているY君でしたが、
五年生の一学期も終わるころになると、
さすがにご両親も、
「このままでは、志望校どころか私立校に合格するような学力がつくのだろうか?」
と不安になったようです。
しかし、性格が性格だから仕方ないと、
成績のアップは半ばあきらめていたそうです。
スローペースの子供はけっして珍しくありませんが、
Y君が彼らと違うところがひとつありました。
それは、彼のノートを見ると、
実にていねいに書いてあり、
解いた問題はかならず正解になっているということです。
そこで今度は、テストの解答を注意して見ると、
手をつけた問題はほとんど合っているのに気がつきました。
そして、たとえ間違っていたとしても、
ちょっと指摘しただけで、その原因をすぐ理解するような子でした。
そして入試の前に、次のようにアドバイスしました。
「君は、手をつけた問題はまず正解だから、
目いっぱいがんばって、できるだけ多くの問題に当たりなさい」
お母さまの心配をよそに、Y君は受験した学校にすべて合格しました。
後でお母さまが「偏差値が40もなかった子なのに、
こんなことってあるんですね」と、
狐につままれたような表情で話しておられたのが印象に残っています。
最後に、Y君のようにマイペース型は極端な例としても、
ていねいさと確実さを備えた子は、
ほぼ例外なく合格していることを付け加えておきましょう。
なかなかやる気の出ない子に効く「奥の手」

どうしても勉強をしない子、
入試が近づいても、
いわゆる「お尻に火がつかない」子がいます。
やる気がないのか、
あきらめたのか、
抵抗しているのか、
それとも幼いのか、
親にとってはイライラがつのるばかりです。
こんなとき、どうしたらいいのかというと、
「もう、しかたがない。あきらめるしかないわね」と、
ため息をつくお母さまがたが多いようです。
しかし、持ってください。
子供の心の底では、すっかり火が消えたわけではないのです。
わずかでも炎が残っていれば、
メラメラと燃え上がる可能性はあるはずです。
「しばらく放任主義でほったらかす」というのもよい方法ですが、
そのまま入試日に突入なんてこともあり得ますから、
それでは意味がありません。
このやり方は、入試半年前くらいの時間のあるときならば有効です。
じつは、いまひとつ、奥の手があるのです。
子供に、大人になったときのことを話して聞かせます。
将来どんな仕事に就き、どんな人間になりたいのか、
子供が自分の進む道を自ら考えてみるような話をします。
二十歳になった息子と、
いっぱいやりながら人生観を語る父親、
そんなイメージです。
もちろんお酒はいりませんが、
とにかく親もテレずに、真剣に自分の生き方、考え方、
子供に対する期待などを話し合ってみることです。
子供が目を輝かせて聞くようなら、
次の日からは、様子がちょこっと変化するはずです。
ラスト・スパートで「受験レースの勝者」をまざせ!

六年生の秋を迎えて、いよいよ入試直前のラスト・スパートの時期がやって来ると、
毎年、子供たちからひじょうに頼もしい手ごたえを感じます。
授業中のでき具合がぐんとよくなってきた。
テストで、以前のようなわるい点数を取らなくなった。
解答の字ができねいでしっかりと書けるようになった。
こんな変化が表れ出すと、
まちがいなくその子の受験態勢が本物になってきたということです。
この変化こそが、子供たちのラスト・スパートそのものなのです。
目つきが真剣になった。
的を射た質問をする。
問題を注意深く読む。
算数ができるようになった。
授業をしていると、こうした子供たちの変化がビンビンと伝わってきます。
そうして、われわれの目から見て、
この時期に勢いよく成績の伸びていく子はとてもよく合格します。
二年、三年と、受験のための準備期間を経て、
十月から十二月の受験直前期に力を伸ばしていく子が、
その長い受験レースの勝者になることが多いのです。


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