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合格発表を待つ
二月一日の朝。一年中でもっとも寒い冬の朝です。
私たち指導員は学校別クラス担任を中心に、
それぞれの中学校に応援にでかけていきます。
校門のところで待っていて、
次々にやって来る子供たちに削っておいた指導員鉛筆、
私の場合は「うんま・る鉛筆」ですが、そのあがらない御守りの鉛筆を手渡しながら、
「がんばれ」
と声をかけて試験会場へ送り出します。
「A君はちょっと緊張した顔をしていたみたいだったけど、だいじょうぶかな?」
「いや、握手したとき、ニコッとしてこっちを見たから絶対だいじょうぶだ」
などと、子供たちのひとりひとりが、
れまでに培ってきた実力をじゅうぶんに発揮してきてくれるかどうか、
おおいに気がもめるのがこの日です。
翌日、早い学校では朝から、合格者の受験番号が掲示されます。
各学校に合格発表を見にいている指導員たちから報告が入ってくるのを、
文字通り立ったり座ったりしながら待っているのですが、
合格発表の日の指導会はまるで戦場です。
続々と合格の報告にやってくる子供たちに「おめでとう!」
とお祝いをいいながら、一方では落ちた子供たちが次の試験に確実に合格できるよう、
励ましたり作戦を練ったり夜更けまで対策が続きます。
そういう意味では、合格発表の日に、
われわれ指導員がいちばんいっしょうけんめいになるのは、
「合格した子供たち」ではなくて「不合格だった子供たち」のほうなのです。
合格した子供たちは、
きっとそれまでの人生で最高にうれしい一日をすごしているのですから。
 
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スキル2 プレゼンテーション
 自分の主張を相手に明確に伝えます
 自分の考えや主張、あるいはお願い事項を相手にわかりやすく明快に伝えます。
提案説明です。このことを「プレゼンテーション」といいます。
このプレゼンテーションはよく使われる語で、
セミナーなどで多数の人を相手に技術説明などをすることにまで広げて使わる場合もあります。
しかし本書では、交渉を行っている相手に限った意味で使います
(相手は1人でも複数でもかまいません)。
 概略、次のように進めます。
なおここでは、Case1を例に、
社内のメンバーに対するプレゼンテーションを想定しています。
ユーザの場合でも、言葉遣いを変えれば同様に行えます。
 
1.目的 ところで今日の話ですが、実はお客様から追加の作業を依頼されたので、
それを貴方にやってもらいたいのです。工数的には・・・。
 2.いきさつ プロジェクトの進捗状況は皆さんの努力で順調ですが・・・
先方の課長様がプロトタイプをエンドユーザにみせたところ・・・。
この仕様変更を受けるか否かという点についてですが、
PLという立場でいうと、来期の受注のことを考えて受けざるを得ないと・・・。
 3.問題・課題 そこで問題となるのは、・・・ということです。
まとめると、工数的に吸収できるかどうか、技術的に可能かどうか、
品質は保証できるかどうか、といったところが問題になります。
 4.提案(詳細) そこで、Javaの技術のある貴方にお願いしたいのです。
実際にJavaを使った開発は今回で2回目になると思いますが、
貴方にとってちょうどよい勉強の仕上げになると思います。・・・いかがでしょうか?
 わかりやすい説明というのは案外難しいものです。
また妙に腰の引けた言い方になってもまずいですし、押しつけになっても困ります。
では、どのような点に注意すればよいでしょうか。
 
①狙い
 ①自分の主張を明確に伝える
 自分が相手にしてほしいこと、わかってもらいたいことを説明します。
主張であり、要請です。
自分の意図をいかに明快に、誤解なく、しかも相手に納得のいくように説明するかがポイントです。
 「貴方の言い分はよくわかった。だから賛成だ(だけど反対だ)」と相手に思ってもらうことが着地となります。
 ②ポイント
 ①自分から切り出す
 「ステップ2 提案説明」で、相手の出方に惑わされずに、
自分から切り出すべきだと解説しました。
相手をコントロールして、たとえさえぎられても、自分の主張を全ていい尽してしまいましょう。
 
②自分の都合ではなく、協働関係でやっていきたいことを示す
 自分の主張を述べる際にとかく間違いやすいのは、
自分の都合を前面に出した説明をしてしまうことです。
「今、この追加作業をやる余裕があるのは貴方しかいないし、
プロジェクト全体としてもやる余裕があるのは貴方しかいないし、
プロジェクト全体としてもやるしかないことなので、
貴方にお願いします。
なんとかやってください」といった感じです。
 この内容が間違っているわけではないのですが、
組織、もしくはプロジェクトの立場を押しつけるような言い方になると、
相手はそれだけで反発したくなるものです。
ですから、プレゼンテーションのやり方としては得策ではありません。
 そこで、この追加作業に一緒になって取り組んでいきたい、
一緒にどうしたらよいのかを考えたい、
つまり「協働」関係(協力して働くというコラボレーションの意味の当て字)という姿勢を出しましょう。
 そのために、冒頭の例のように、
この作業をやることによる本人のメリットを必ず忘れずに訴えましょう。
 相手がユーザの場合は、
「納期延長した方が使い勝手の良いものができて、
エンドユーザさんにかえって喜ばれます」といったように話します。
 自分の都合を相手に押しつけるのが交渉ではなく、
良いシステムを作る、良いプロジェクト運営をする、
自分と相手の両者にとってメリットになるようにするために交渉をするのでしたね。
 
③反対を恐れない
 プレゼンテーションするときの自分の気持ちとしては、2段構えになります。
 プレゼンテーションに入るときには、
相手のイエスをいってもらうつもりで準備をして、ベストの案として説明します。
しかし、説明が終わったら、相手が何をいってきてもいいですよ、というニュートラルな姿勢になります。
 ですから、結果的に相手からノーが出ても、動揺しないようにしましょう。
交渉において必ず通ることになる通過点の1つに過ぎません。
落ち着いて次に「スキル3 アクセプト」を行います。
 自分が良いと思ったことを相手がどう思うかは交渉に入ってからの話であって、
とにかく堂々と主張しましょう、というのが大前提になります。
こんなことをいったら嫌がられるのではないか、
評判が悪くなるのではないか、
このあと進めづらくなるのではないか、
などを気にすることなく、正しいと思うことは主張してみましょう。
これをした上で、「ただし、押しつけるな、相手のメリットを忘れるな、相手の言い分を聴け」へといきましょう。
 
④筋道立てて進める
 「相手が納得するようにわかりやすく説明する」には、
上手に話す前に、内容そのものが筋道立てた話の順序になっていることが必要です。
いわゆる論理的な構成ということです。「弁舌さわやか」に話せばよい、というわけではありません。
 過不足なく、A→B→C→・・・が説明されていなければなりません。
 したがって、このプレゼンテーションは事前準備でほぼ決まります。
 重要な交渉の場合は、事前にストーリーを作り、
それをメモし(提案書という形にまとめ)、社内の誰かに一度チェックしてもらうことが望ましいです。
チェック点は、論旨は明確か、論理の飛躍はないか、説明不足はないか、過剰な説明はないか、
用語はわかりやすいかなどです(その詳細は、次の③やり方で)。
 
③やり方
 ①構成要素と順番
 構成要素は4つあります。
進める順番は1→4です。
この構成要素と順番は論理的な順番ですから、
順番を前後したり、
抜かしたりしてはいけません。
 プレゼンテーション全部の時間は、あまりかけないのがふつうです。
先がまだありますから、数分から10分くらいと考えてください。
 これ以上長いとダメというわけではありませんが、
聴いている方がイライラしてきます(「私にも早く意見をいわせろ」と思われてしまう)ので。
 ただし、技術打ち合わせやセミナーなどでは、ずっと長いこともよくあります。
このセミナー等は本書でいうところの「交渉」ではありませんが
本書の「プレゼンテーション」のスキルを使って行うとよいでしょう(大いに使ってください)。
 
1.目的:まず、今日の内容の「結論」を簡潔に、明確に話し、今日の交渉の目的を明らかにします。
 このとき、次のような言い方をする人がいます。
「実はお客様から追加の作業を依頼されたので、その点について相談したいのです。その内容というのは・・・」
 ここで注意したいのは、「相談したい」という言い方です。
こういうあいまいなものの言い方はよくありません。
交渉して結論を出さないといけない事項は、
「追加作業」を、誰がどのようにやるのか、もしくはやらないのか、ということです。
 ですから、「結論」は何かを簡潔に、ポイントだけをこの「目的」のところで述べましょう。
「これこれを、いつまでに、貴方にやってもらいたい」ということを話すわけです。
 では、なぜここを「結論」というネーミングにしなかったのかといいますと、
「私はベストの案だと思うけれど、もっと良い案があれば、これにこだわりませんよ」という姿勢を示したいからで、
「交渉の結論」を得る箇所ではないからです。
 
2.いきさつ:今日交渉をするに至ったいきさつを述べます。
時間的にさかのぼって、この交渉に関連することを整理して説明し、確認します。
場合によっては相手もよくわかっていることがあるかな、
と思っても必要なことはいって確認します。
自分が大切だと思っていることと、相手が思っていることは往々にして違うものだからです。
 これにより、相手と交渉のスタート地点のすり合わせをします。
何を「いきさつ」として説明したらよいのかについては、
その交渉内容によって決まります(本節の冒頭の例では3つの観点をあげています)。
何を説明し、何を説明しないかを自分で考えて決めましょう。
 この「いきさつ」だけでなく、
次の「3.問題・課題」「4.提案(詳細)」でも(もっといえば交渉全体も)同じなのですが、
説明すること/しないことを決めるために、内容全体を「構造化」して捉えるとよいでしょう。
たとえばファイルのツリー構造とか、
QCの7つ道具の1つである特性要因図のようなやり方で、内容を整理し、セルフチェックを行うのです。
 このように、「構造化」して考えられるように頭の使い方をトレーニングすることが必要です。
 
3.問題・課題:今日提案した内容を実行しようとした場合の問題や課題を、
ここで整理します
(「CMフェーズのステップ5」で、「問題・課題」のことを説明しましたが、同じ考え方です)。
 「もしこの追加作業をやるとしたら、障害になること、手を打たないと上手く実行できないこと」をまとめ、
確認するわけです。
そしてこの解決策として、次の「4.提案(詳細)」を説明することになります。
 
4.提案(詳細):
「そこで、このようにするのがベストと思います」という観点で、主張内容を具体的に説明します。
「1.目的」で述べた「結論」を詳しく説明します。
 構造化して、筋道立てて、ハッキリといいます。
 たとえ相手にとっては面白くない内容だなと、
自分でも感じていたとしても(相手に残業を増やしてもらうことになるとか、
相手に人を出してもらうとか・・・)、これ以上の案はないのだという信念を示しましょう。
 
②根拠を明確にする
 説明内容のチェック点は、構造化できているか否かという点と、もう1つあります。
それは、主張内容の妥当性となる「根拠」が明確化できているか否かです。
 「重要度」「理由」「全体的状況」「位置づけ」「相手のメリット」「必然性」といった観点が必要になります。
「根拠」の観点を全ていわなければならないわけではありませんが、相手のメリットは必ず強調しましょう。
 根拠を説明することは、交渉のどの場面でも大切です。
他人に何かをいうときには、必ずこの「根拠」を説明するようにしましょう。
 根拠が不明確なときは、必ずこの「根拠」を説明するようにしましょう。
根拠が不明確なときは、必ずその話や議論はおかしいのです。
根拠を説明できないことを、相手に納得してもらうことはできません。
にもかかわらず、意外と根拠もないのに他人に何かを依頼する人は多くいます。
つまり、単に自分がやってもらいたいことを他人に依頼するだけのことが多いのです。
依頼された側では、やらなければいけない理由がわからないので、本気では取り組みません。
 
③説明の言い方
 ・あいまい語を使わずに、断言して、明確に述べましょう
  使ってはいけない語:「一応」「大体」「たぶん」「~と思う」など
  語尾:「~けども」で続けずに、です、ます、ございます、で言い切る
 ・熱意で相手を動かしましょう
 ・大きな声で、相手を見て話しましょう
 ・基本的には、ほかのスキルやステップよりハイテンションで行いましょう
 
Q&A 11
 Q:プレゼンテーションで相手のメリットを訴えることは望ましいが、
現実問題としては、相手にメリットがない案もあり得るわけで、
そのときは仕方がないので低姿勢でお願いするしかない?
 
A:確かに、一見すると相手にとってメリットがないかのような提案、依頼をすることもあります。
納期延長、機能削減、費用増加等のお願いは、
ユーザにとってメリットがあるかといえば、ないのです。
しかしそういったら、ほとんどの交渉は相手にとってメリットがないことになりかねません。
 メリットとは相対的なもので、ほかの案よりこちらの案の方が良い、と考えればよいのです。
その良い点を相手のメリットとして訴えましょう。
 相手にとってメリットのない案を、いくら「低姿勢」でお願いしてもダメなものはダメです。
むしろ、常に堂々と、自信をもって、自分の考えは述べましょう。 答:ノー
 
Q&A 12
 Q:プレゼンテーションでは、なぜこの案を良いと思ったのか、自分の考えを十分に説明しなければならない。
したがって、自分の都合や自分(自社)の立場を、
押しつけがましくならないように、上手な表現で相手にわからせることが重要である?
 
A:ちょっと設問が微妙な表現になっていますが、
まず、最初のセンテンスはOKです。
2番目ですが、「上手な表現で相手にわからせる」こと自体も必ずしも間違いではありません。
しかし、最後の「重要である」ということが問題です。
これだけですと、自分の都合を説明することで終わってしまうので、ノーです。
それ以上に重要なのが、さまざまな観点からの「根拠」の説明です。 答:ノー
 
スキル3 アクセプト
 対立点を明確にし、相手の考えを理解します
 
プレゼンテーションをしたあとは、「いかがでしょうか?」と、
自分の今の提案Aについて相手はどう思ったか、相手の意見を聴きます。
尋ねることで、相手の反対意見と、その内容であるB案をよく理解します。
そして相手と自分の意見で、共通する点と、対立する点(ギャップ)を整理し、合意するわけです。
 相手のいうことを聴いて「アクセプト;受け止める」のです。
 
いかがでしょうか?・・・
 1.じっくり聴く
 2.要約確認 なるほど、貴方としてはこれ以上残業を増やしたくないと考えるわけですね。わかりました。・・・
 そうですか、Y君に今の貴方の仕事を振るのはスキル的に危ないと思うのですね。
 3.言い残しの確認 ほかにありますか?・・・
 4.共通項・ギャップ項の確認 そういったところですか。
そうしますと、今の話を整理すると、品質の良いものを作っていきたいという点では私と一致するわけですね。
ただし、貴方としては、これ以上残業は増やしたくない、Y君では無理ではないか、・・・、といったところでしょうか。
 
①狙い
 ①相手の考えを理解する
 プレゼンテーションで、自分が話したあとは、相手に話したいことをいってもらう番です。
相手の考え(B案)をよく理解します。
そのために、しっかりと、じっくりと、よけいなことをいわずに聴きます。
この切り替えをしっかりと、メリハリをつけて行います。
野球の試合のように攻守を変えるのです。
 したがって、このアクセプトとプレゼンテーションは、
どちらかだけ、あるいはどちらかに力点がいってしまう、ということのないようにしましょう。
 プレゼンテーションをしっかりやってアクセプトがお座なり、というのでは、いわゆる受け身型になります。
 両方のスキルを、バランスよくしっかりと行いましょう。
 
②対立点を明確にして課題解決へ向かう
 相手の話をよく聴いた結果として、
お互いの考えの共通点と対立点(ギャップ)が明確になったら、問題解決に向かうのでしたね。
対立点が明確になると交渉が進めにくい、暗礁に乗り上げてしまうと考えないようにしようと、前に書きました。
次にフェーズで課題を明確にして、その次のフェーズで解決策を作っていけばよいのですから。
 
②ポイント
 ①補足説明や反論をしない
 自分の感情をコントロールして、補足説明や反論をしないと、
というのが最大のポイントになります。
この点は、「ステップ3 相手の意見を率直に聞く」で紹介した通りです。
 
②解決策をここで作ろうとしない
 また、ときどきやりがちなのが、解決策をここで作ろうとすることです。
これも、してはいけません。
なぜなら、まだお互いの対立点が何かを明らかにしている段階です。
問題点や課題が明確になっていません。
つまり、どんな解決策を作ればよいのかがわからないはずです。
 自分の主張であるA案の延長で、
「あっ、それはいいや、そうしましょう」と、拙速にならないようにしましょう。
あるいは、根拠なしに作るのは無駄な努力ですから止めましょう。
 
③相手の話を整理する
 要所要所で、相手のいうことを整理し、共通項と対立点を確認しながら進めます。
自分からは何かをいい出そうとせずに、相手のいうことを間違いなく整理することに専念します。
 
③やり方
 ①進める順序
 1.相手の反対意見をじっくり聴く
 「いかがでしょうか?」と、自分の考えに対して相手はどのように考えたのかを聴きます。
人によっては口の重い人もいますから、その場合はハッキリと「お考えを聴かせてください」と押します。
 そして、相手が話すのを聴きます。相手が何を話そうか考えているときにはじっと待ちます。
その場が沈黙になってもかまいません。
 相手が話しているときは積極的にうなずいて、
真剣に聴いていますよというサインを相手に送り、相手にも真剣に話してもらうようにします。
 また、メモを取りながら聴きます。
真剣に聴いているというサインを送ると同時に、相手のキーワードをメモして、誤解のないようにします。
 なお、メモを取りながら聴きます。真剣に聴いているというサインを送ると同時に、
相手のキーワードをメモして、誤解のないようにします。
 なお、メモを書いているときは仕方ないのですが、それ以外は必ず相手を見ます。
相手の様子を見ながら聴いて、本音でいっているのか、駆け引きをしようとしているのか、
あるいは悩んでいるのか探ります。
本当のところはわからないことが多いかもしれませんが、相手を「ヨム」つもりで聴かなければなりません。
そのために、相手の表情や動作などを観察します。
 
2.相手の反対理由は要約して、キーワードで相手に確認する
 相手の話の内容が一段落したと思われたら、
ちょっとさえぎる感じになってもよいですから、必ず整理し、確認します。
 「なるほど、貴方としては『これ以上残業は増やしたくない』
(『 』内は相手のキーワード)と、考えているのですね」のように、
相手のキーワードを復唱して確認します。
「相手のいったことの確認をしましょう」というと、
相手のいったことを全ていい直そうとする人がいます。
それは手間がかかりすぎますし、キーワードだけにしておくのがコツです。
 確認のための言い方を覚えておくと便利です。
「そうしますと『・・・』のように課長様はお考えなんですね」という具合です。
ここでの確認とは、相手のいったことを理解したという意味だけで、
賛成する、反対する、いわんや合意するということではありません。
相手のいうことに合意したかのような言い方は禁物です。
「・・・納期は厳守ということですね、わかりました」のようにいってしまうと、
交渉は途中で終わり、自分の方が不利になってしまいます。
 
3.相手の意見が終わったら、「ほかにはありませんか?」と相手に聴いてみる
 2つ3つ確認しながら聴いていくと、相手はいうことがなくなっていきます。
(特に反対の言い分は、概してそんなに数は多くありません。
例外的にしつこい人(?)はいますが、時間的にも数分~10分くらいですから、
くじけずに聴きとおしてください。頑張りましょう)。
 相手が意見がなくなったかなと思ったら、その確認をします。
「ほかに何かありませんか?」
 これでまた相手が話し始めたら、また聴き役に回ります。
「もうないです」と相手がいったら、あるいは同じことを繰り返しいうようになったら、次に全体のまとめに入ります。
 
4.最後に相手のいったこと(B案)を要約・整理する
 最後に、相手の話した内容のポイントを再度整理し、確認し、B案となります。
自分の考えと一致するところ(共通するところ)と、対立する点(ギャップ)を明確にするのです。
 要は、「やらなければいけないこと」の2つだけしかいうな、ということです。
 「やらなければいけないこと」
 ◇相手のキーワードを確認する
 ◇相手の考えのポイントを要約し、整理する
 ほかのことは一切しゃべってはいけません。
交渉は世間話とは異なり、目的をもっているわけですから、
自分の気の向くままに話したり聴いたりするわけにはいかないのです。
 
Q&A 13
 Q:アクセプトは、相手が何もいわなければ、
あるいは大した反論をしてこなければ、「わかりました」と終えて、次のCMフェーズに入ればよい?
 
A:大間違いというわけではないのですが、
相手がいいたいことをいい切ったのか、もう少ししっかり確認しましょう。
相手の考えを間違いなく理解するということは本質的に難しいことですから、
安易にすぐわかったつもりにならずに、よく聴きましょう。
「ほかに何かありませんか?」「ということで、よろしいですか?」をハッキリということが大切です。 答:ノー
 
Q&A 14
 Q:アクセプトは、相手の反論(「それは難しいですよ」)や
逆質問(「それは、どのくらいかかりそうなのですか?」)に対して、
その場で答えていき、結論を少しでも導き出すようにする?
 
A:相手のいうことにうかうか反応していると、
相手にコントロールされてしまい、交渉が思うように進まなくなります。
ここは、相手の言い分を十分に理解することが目的ですから、
相手のことがよくわからないのに中途半端な説明をしても、
無駄な努力になるか、相手のペースになってしまいます。
したがって、基本的には答えることはしません。
「なるほど、その点がご心配なんですね」といった感じであいづちを打っておき、先へ進みます。
 ただし、どうしても補足説明をしまいと話が先に進まない、ということはあり得ます。
そのときには手短に、簡潔に説明をして、
「ということですが、課長様いかがお考えでしょうか?」と、必ず聴き役に戻ります。
 なお、このように補足説明が必要になるのは、
前のプレゼンテーションが適切な説明になっていないので生じることです
(よくわからないので疑問が出るわけです)。
プレゼンテーションがキチンとできていれば、補足説明の必要は生じません。 答:ノー
目次
プロローグ
子供たちをどんな人間に育てたいのか
受験を通して身につけることのできる人生の「武器」
子供のなかの「合格する力」を育てよう
「合格しやすい子」と「合格しにくい子」
「合格させる親」の9つの条件
合格させる5つの親子関係
子供の16のタイプ別 合格させるアドバイス
男の子と女の子
中学受験は、山あり、谷あり -親が不安にかられるとき-
子供の発達段階を見て考える 合格させる受験対策
合格する四教科の完全学習法
合格させる5つの戦略
「6年生の秋」からの合格対策
合格体験記
入試直前 万全の準備で入試に臨む
塾との上手な付き合い方
第3章 交渉スキル
 
それでは、第3章で各スキルの説明をしていきます。以下の点にご注意ください。
 
●現実の交渉では、各スキルを次のように考えます。
 ①単独ではなく連続的で、かつ順番がある(ex.プレゼンテーションの次にアクセプトを行う)
 ②相互のスキルがお互いに関係し合う(ex.アクティブクエスチョンとコントロールリスニングはワンセットで意味がある)
 ③状況対応が必要(ex.「アイスブレイク」の話材、この人とこの場合は何を話題にするべきか?)
 ●ただし、あるスキルだけを単独に取り上げてコミュニケーションを取ることもありますので、
随時活用してください(ex.ヒアリングだけを行うとき;アクティブクエスチョンとコントロールリスニング、
メンバーの顔見せなど雰囲気作りだけを行うとき;アイスブレイク)。
 ●自分の体験と、本書に書いてあることを結びつけることができたとき、自分のものになったといえます。
「こう書いてあるのは、あのときのアレだ・・・」といった具合に、うまく結びつけてください。
 ●「スキル~ステップ~フェーズ」は対応していますので、これまでの章を前提として考えてください。
ただし、スキルの説明を単独に読んでも理解できるように、
これまでのステップ、フェーズの説明とオーバーラップさせたり、関連させたりしています。
 ●いろいろなスキルが出てきますが、もちろん一度に全てを身につけようとすることはありません。
自分にとって最も今必要だと思うスキルをいくつかピックアップして、挑戦してください。
 
スキル1 アイスブレイク
 相手と心を接近させて、話しやすい雰囲気を作ります
 
「アイス(氷)」を「ブレイク(壊す)」して、その場の冷ややかな雰囲気を壊します。
つまり、いわゆる「世間話」をして、相手と打ち解けた雰囲気で話ができるようにします。
ただし、「世間話」とはちょっと違うところがあります。
 
「お疲れ様です。毎日暑い日が続きますね。・・・野球がお好きでしたよね、この前もされたそうですが・・・」
 「今日は風が強いですね。・・・先日の新聞に御社の新製品発表会の記事が出ていて、読みましたよ。
大々的におやりになったんですね。・・・新製品の評判は良いみたいですね。どうなんですか?・・・」
 
実際には、アイスブレイクをやってない場合もあると思います。
やったとしてもお座なり程度のこともあるでしょう。
では、具体的にどのように考えて行えばよいのか、解説していきましょう。
 
①狙い
 ①話しやすい雰囲気を作る
 何のために、何を狙いとしてアイスブレイクを行うのでしょうか?
まず第1に、その場を和らげ、お互いに話しやすい雰囲気を作るために行います。
これから交渉に入るというときの雰囲気は、
やや堅い、緊張感が漂っている、よそよそしい、といったものであることは大いにあり得ます。
そこで、胸襟を開いて(腹を割って)、勝ち負けではなく、統合的に共に勝てるように話し合おう、
お互いに本音で自由に頭を使って解決策を話し合おうという雰囲気にもっていきたいのです。
 
②心を接近させる
 第2には、相手と心を接近させるために行います。
この点が、いわゆる世間話と大きく違うところです。
世間話では話している最中にしらけず、楽しく過ごせればよいわけです。
 しかしアイスブレイクは、楽しく過ごすことが目的ではありません。
信頼関係を作りたい、心を開いて一緒になって考えたい、
立て前ではなく本音で話し合いたい、ということを目的としているのです。
心を接近させたいのです。
そしてこのことは、交渉の全プロセスにおいて必要かつ重要なことなのです。
 これは人間としての普遍の真理です。
「私(注)の交渉の運び方は開けっ放しで、
最初に接触しただけで人の心にすぐ入り込み信用される。
率直さと真実一路の態度は、どんな時代にあっても通用するものだ」
(モンテーニュ(16世紀)、「エセー」より。注:私→モンテーニュ自身のこと)。
 
②ポイント
 では、どのようなことに留意して、あるいはどんなことを押さえて行えば成功確率が上がるのでしょうか?
そのポイントを紹介します。
 
①敵より、友人との交渉の方がやりやすい
 まず1点目は、相手はこれから「戦う敵」ではなく、
一緒に考え相談する「友人」だという関係になりましょう。
敵と交渉するより、友人と行った方がやりやすいに決まっています。
 ところが意外と、
最初から肩肘張って「貴方を敵と見なしてこれから交渉をします」といわんばかりの人が、
実際には結構いるのです。
自分から不利な状況に入っていく必要はありませんね。
相手の態度や出方がどうであれ、
自分は「貴方を、共に相談する友人と見なして交渉をします」という姿勢を出していきましょう。
 狙い
 明るい話題で相手と心を接近させて、話しやすい雰囲気を作る
 ポイント
 敵ではなく、味方にする
 自分からリラックスする
 相手に関心をもつ
 気持ちを言動で表現する
 □挨拶する
 □態度をキチンとする
 □表情に変化をつける
 □うなずく、あいづちを打つ
 □イエスを引き出す
 □ほめる
 □豊富な話材をもち出す
 □相手に話してもらう
 
②自分がまずリラックスする
 自分に非がある話(開発側のミスから起きた不具合など)の交渉とか、
特に相手が普段あまりお会いしないような高い立場の人だったりすると、
自分自身が緊張もするし、上手くいかないのではないかと不安にも思うものです。
 そこでまず、自分自身がリラックスしましょう。
自分から心を開き、ざっくばらんな雰囲気になれば、
相手もそのように心を開いてざっくばらんな方向にいきます。
自分が心を閉ざしていれば、相手は心を開いてくれません。
 この順番を間違えないようにしましょう。
自分の働きかけが先です。
相手の出方が決まるのは自分の働きかけのあとだ、と考えましょう。
 なお、自分は働きかけをしたにもかかわらず、
相手は頑なであり続けた、場は和まなかった、ということはあり得ます。
このときには、2通りに考えてください。
 (1)自分の働きかけのやり方が下手だったのではないか?
 →「今後はここをこう工夫して、もっと上手くやろう」
 (2)「相手はそういう人だ、しょうがないなあ」と諦める。
しかし、その後も働きかけ自体は諦めずに、機会があるごとに行う(たとえば、
「ステップ6 課題解決への協力確認」で行う)
 
③相手に関心をもつ
 交渉では、相手の心の動きや気持ち、考えがどうか、ということが重要になります。
そこで、相手に関心をもつことが大切です。
 関心をもてば当然「この人はどういう人なのだろう?」という疑問が起きて、
アイスブレイクでの話題にも事欠かないはずです。その人に対する疑問を質問すればよいのですから。
 
④気持ちを言動で表現する
 自分は「貴方を、共に相談する友人だと見なして交渉します」と思っているのなら、
そのことを相手にわからせる言動を取りましょう。
 自分の気持ちを相手に言葉や態度で伝えましょう。
そうしないと自分の気持ちは相手には伝わらない、というのが事実です。
たとえ、相手が親しい人であってもです。
 いうことの手間を惜しんで、その結果として自分が誤解されたり、
相手との信頼関係が築けずに、苦労しても損するだけです。
一時の手間暇を惜しまずに言動に表しましょう。それが自分のためです。
 
③やり方
 では、具体的にどのようなやり方をすればよいのでしょうか?必要項目を列挙します。 
 
  以下をチェックポイントリストだと考えてもらって、
自分自身で、あるいは一緒に交渉力を学んでいる人どうしで、
できているか否かをチェックし合うのもよいでしょう。
①挨拶挨拶をキチンと行いましょう。親しき仲にも礼儀あり、です。
朝の「おはようございます」の一言が、さわやかな朝を演出します。
しかしIT業界では、朝の挨拶をしない人や組織をしない人や組織が多いのも事実です。
このことが交渉にも反映されていて、スタート時での挨拶をキチンとしない人が意外といます。
「いつもお世話になっております」
「貴重なお時間をいただいて、ありがとうございます」
「どうもご苦労様(メンバーに対して)」・・・といった一言です。
これがないために「なんだこいつは、変な奴だなあ」と思われて損をするのはバカバカしいですね。
万が一、貴方の職場で朝の挨拶ができていなかったら、
それを直せないで、交渉力をスキルアップすることはできないと考えてください。
②態度次にあげるように、キチンとした態度を取りましょう。
・礼をするときは、しっかり一度行う(ぺこぺこする必要はありません。相手が顧客のときには、45度の敬礼を)
・背筋を伸ばして立つ、座る
・はすかいに座るのでなく、正面を向いて座る
・最初のうち(アイスブレイク中)は腕組み、足組みはしない。
あとになればよい
(欧米ではおかしくないが、日本ではまだエラソーだという感じをもつ人が多いので)
・相手を見る(メモを見るからといって、下ばかり見ていてはいけない)
・だらしのない服装、髪型をしない
・手先でボールペンなどをもてあそばない
以上を読んで、「何だ、新入社員教育の、しかも一番初めにいわれることじゃないか!?」
と思ったかもしれません。
そのとおりです。
しかし、この基本中の基本ができず、自分はアインシュタインと同じような大理論家なので、
身なりや態度など気にするヒマはないのだ、
といわんばかりの人がいるのです
(逆に最近は、ステキな身なりをしている方が、特に若い方に増えましたね)。
③表情明るく、笑顔で接しましょう。
ただし、まだ交渉がスタートするところなので、余裕がない人に笑顔を出せ、
というのは意外と難しい要求です。
緊張することがあってもおかしくありませんし、
そんなときには笑顔を出す「つもりで」、で構いません。
なお、「交渉に入ったら笑顔を出している場合ではない」と思っている人もいます。
確かにそういうこともいえなくはないですが、
笑顔を出すのが自然なときもあり得るわけです
(良いアイデアができたときなど)。
そこでアイスブレイク後は、「笑顔でいよう」というよりも
「表情に変化をつけよう」と考えましょう。
笑顔を出すべきときは出すし、難しい顔をするときはそのようにしましょう。
手抜きをせずに、その場にふさわしい表現を、顔の表情でも行いたいものです。
④うなずき、あいづち相手が何かをいったときには、必ず首を縦に振ってうなずきましょう。
そして、声に出して、あいづちを打ちましょう。
「はい、なるほど、そうなんですか、たいへんですねえ」等など、
ハッキリとあいづちを打って、私は貴方の話を真剣に聴いていますよ、
というサインを相手に送りましょう。
⑤イエスを引き出す相手の心に接近したいのですから、
相手から「イエス」といってもらうことをしましょう。
相手から「ノー」をいわれたら失敗です。
「だいぶ暖かくなりましたね」
「ええ、そうですね」のような天気の話題がよく出ると思いますが、
それは確実にイエスの取れる話題だからです。
このように「事実」を尋ねてイエスを引き出しましょう。
しかし、事実だけだと話が盛り上がらないので、
次に「意見」で話を広げたり、深めたりしましょう。
「朝晩の通勤も楽になってきましたよね、どうですか?」
⑥ほめる
⑤イエスを引き出す話題の中に、できるだけ相手をほめる話題を入れましょう。
ほめられて嬉しくない人はいません。
相手と心を接近するためには、ほめる話が一番有効だ、
くらいに思ってください。
厳密には、相手の心の琴線に触れる話がよいのですが、
そこまで考えて、アイスブレイクが気楽にできなくなると困りますので。
さて、この「ほめること」には、重要な二次的効果があるのです。
他人と良い関係を作るには、相手の良さを認める必要があります。
逆にいうと、相手の悪い面しかわからない人のことを好きにはなれません。
ところが人というのは、他人の悪い点を見ることは素早くできるのですが、
良い面を見ることはなかなかできないという傾向にあります。
ところが、「ほめなくては!」と考えると、
相手の良い点を探すことになり、悪い面を見がちという傾向を改善できます。
そして、良い点を知れば相手のことが好きになり、
信頼関係作りのスタートを切りやすくなります。
初対面の人のことはわからないのでほめにくい、というときには、
交渉の場や周りのことで、目についたことをほめましょう。
「ここは駅に近くて、便利がよいですね」など、ほめようと思えばいろいろあります。
⑦豊富な話材ほめる以外にも、幅広い話材をもっておきましょう。
ここでは、話の材料という意味で、話題ではなく話「材」といっておきます。
特に、ユーザのトピックスや明るいニュースについては、
日頃から情報収集を怠らないようにしましょう。
これは、アイスブレイクだけでなく、ヒアリングや、開発作業そのものにも影響するかもしれません。
次のような暗い話題はもちろんダメです。
「最近、御社の株価が下がっているようで、たいへんですね?」
「そうなんだよ。だから、この開発の費用は大幅に値引きしてもらいたいのだ」
話材には、ほかに次のようなものがあげられます。
・相手の個人的な話(これまでの仕事内容、プロジェクトメンバー関連、趣味、名前、出身地・・・)
・相手の組織の話(組織の動き、変化・・・)
・一般的なニュース(IT業界動向、技術関連、中国への進出・・・)話材の選択には「状況対応」が必要です。
⑤で述べたように、相手が「イエス」といってくれそうかどうかを判断基準にして話材を選択しましょう。
さて以下に、出してはいけない話材をあげておきますので、くれぐれも注意してください。
・政治や宗教の話(これはタブー、ここで対立したら交渉以前に失敗する)
・スポーツや芸能などの好き嫌い(相手がどんな人が好きで嫌いかは、
(全ての芸能人の好き嫌いデータベースでもない限り)わからない)
・社内の組織図を話題にするのはよいとしても、派閥的な話にはいかないようにする
⑧相手に話してもらうことが重要です。
こちらからの話に乗ってもらって、「その点、実はこうなんだよ」と、
相手が自発的にしゃべってくれることを目指しましょう。
いくら話材が面白く、かつ適切であっても自分が話してばかりいたのでは、
一方的ということになり、アイスブレイクは失敗に終わります。
しゃべりすぎは禁物です。
質問をして話させることが、ここでは重要です。
話材を用意しておいて、それを質問の形でぶつけ、
相手にその質問に答えてもらう、そしてそれにあいづちを打って、よく聴くわけです。
 
Q&A 9
Q:アイスブレイクは、相手(親しいか否か、話好きか否か等)や状況(緊急性、時間の余裕等)によって、
実際に行うこともあれば、意図的に行わないこともある?
A:原則として行うべきです。こちらから相手に働きかけようという姿勢で臨みたいからです。
もちろん、一言で終わることもあり得ますが、アイスブレイクの趣旨はいつでも大切です。
とはいえ、トラブル処理にお伺いして、一刻も早く対処しないといけない場合はどうでしょうか?
この場合には、挨拶をしたらすぐに作業に入ります。
つまり、アイスブレイクはしないともいえます。
挨拶をしたのだから、アイスブレイクはやったのだといってもよいですが、
いずれにしても、こうした場合は本格的なアイスブレイクはやりません。
しかし、そもそもこのような緊急事態は「交渉」とはいえません。
交渉は、最低限の時間、人、場所が確保されて成り立つものなのです。 答:ノー
 
Q&A 10
Q:アイスブレイク時だけではないが、相手に好感や信頼感を与えることとして、
服装、言い方、あいづちの打ち方、表情、声の大きさなど、外見や表面的な言動も大きく影響する
A:話す内容が正しければ言い方や態度などは関係ない、という考え方もありますが、これは間違っています。
自分が人を見るときのことを考えてください。
たとえば、その人の服装を見て、
「この人はこれこれの人ではないか」と想像したりしないでしょうか。
アメリカの大統領選挙では、服装やメイキャップの専門家を雇うほどです。
外見や表面的な言動は、相手の大きな影響力があるのです。 答:イエス
ステップ10 詰め
 これでよいのか、という相手のためらいを処理して
 決めていきます
 
解決策がいまだ決定していませんが、ほぼ1つに決まりかけています。
そうなると、相手の心の中に、これで本当によいのだろうかという疑問や不安などが生じてきますので、
それを処理してC案を最終決定します。
 
<前のステップ>そうですか、1案が良さそうだけれども、
今ひとつというところですか。
2案、3案よりは良さそうでしょうか?・・・
 <ためらいの処理>では1案について、何かご心配な点でもございますか?
・・・
その点につきましては、自動テストツールを使って行いますので大丈夫です。
・・・
ほかに何かございますか?
・・・
<決定にもち込む>それでは、カットオーバー後1ヶ月ほど、
支援のための専任SEを御社に常駐させていただこうと思いますが、
それでいかがでしょうか?
・・・
では、この第1案に第2案のドキュメント作成の件を付加した案でよろしいでしょうか?
・・・
ありがとうございます。
 
このステップを進めるにあたってのポイントは、大きく2つあります。
 
①ためらいの処理をする
このステップに入るときには、大筋では良さそうだけれどもまだ決められない、という状況にあります。
このとき、相手にはさまざま疑問や不安が生じています。
本当にこの案がベストなのだろうか?
この機能でエンドユーザは満足してくれるだろうか?
品質的にこれで万全だろうか?
テスト期間はこれで十分なのだろうか?
この案で私のメンツは保たれるだろうか?
・・・等
・・・
 そこで、こういった「ためらいの心理」を吐き出させ、それを解消して決定にもち込みましょう。
 「ためらい」は、決定が重大になればなるほど大きくなります。
また、相手の人柄によっても出方がかなり異なります。
したがって、相手に働きかけていくことが必要です。
 特に、一本調子にならないように、あの手この手で働きかけていくことが大切です。
「お願いします」の一点張りでは、あまり効果的ではありません。
 ある程度の事前準備はできる限りしておきましょう。
こういった環境でこのような話になれば、
大体こういったたぐいの疑問や反対が出てくるものだ、
という観点で、想定問答集を作っておきましょう。
 
②今決めるという気持ちで
 ためらいの処理の際には不確定要素がありますので、
その場で処理できない問題が出てきて決着がつかず、次回へもち越しになることはあり得ます。
 しかし、自分としては今決めるのだという気持ちで臨みたいものです。
最初から次回でもいいや、と思っていると、本当に次回に延びてしまいます。
そうなると、自分にとっても、貴重な時間が無駄になりますから、スピードを重視してこのステップを行いましょう。
 相手に納得して決めてもらうのが良いのだ、
ということで交渉を進めてきたのですが、
このことは「相手が決めてくれるまで待っていよう」ということではありません。
相手には相手なりの考えや状況があるだろうから、こちらからせっついてもロクなことはない、
という考えは間違いです。
 「100点を目指す60点主義」でやりたいものです。
あくまでも理想(100点)は追い求めます
(特にSLフェーズは100点を目指してアイデア創出を頑張りたいところです)。
しかし、この最後の詰めの段階でもたもたしていてはらちがあきませんから、
落第しない程度の60点
(総合的に考えて、これで合意してもよいと妥協できる最低の線)でも良しとするくらいの気持ちをもって決めましょう。
そこで、妙に遠慮をしないで、「押す」気持ちが必要です。
早く決めて早く作業を進めることが相手のためでもあり、自分のためでもあるのですから。
 
◎こちらから働きかけてためらいを処理し、決定にもち込もう。
 待つのではなく、今決めるという気持ちで。
 
ステップ11 クロージング
 コミュニケーションギャップには気をつけましょう
 
案が決まりましたので、あとはコミュニケーションギャップが生じないように合意事項を確認をして、
今後のスケジュールを決め、お礼をして終わります。
 
「それでは、この第1案の改訂版で決定させていただきます。
今日の結論を確認しますと、解決策としてはこの第1案の改訂版となります。
詳細内容、特に変更になったスケジュールについては、
あらためて資料を作って来週水曜日におもちします。
また、専任のSEを御社に・・・
 以上でよろしいでしょうか?
この議事録は、今日中にメールします。
では、来週水曜日の10時によろしくお願いします。
今日はお忙しいところをありがとうございました・・・」
 
ここでのポイントは以下の2点です。
 
①確認をしっかりと行う
 この「ステップ11」の名前である「クロージング」は、
一般の営業の商談に関してもよく使われる語で、
一般の営業では「ステップ10 詰め」の内容も含んでいる場合があります。
しかし本書では、「クロージング」を、確認することに焦点を絞って使っています。
 いざ開発作業が始まってから起きがちなので、手離れの悪さです。
一度決まったはずのことをぶり返したり、
いった/いわないになったり、決まったことをやってくれなかったり、
やろうとするのだけれど誤解をして上手くいかなかったり等など、
いわゆるコミュニケーションギャップを生じることが実際には多いのです。
 そこで、この最後のステップでは、くどいくらいに相手に念押しをしたいのです。
5W1Hで具体的に、相手と合意した内容や決定事項を確認しましょう。
今後の進め方やスケジュール、宿題なども決める必要があります。
また、議事録を必ず作って、お互いにもちましょう。
 確認するときには、必ず相手を見ながら行ってください。
こちらのいうことに対して、相手はどのような反応を見せているのか、
しっかり見て判断しましょう。
納得したような表情なのか、
怪訝そうな感じなのか、
うなずいているのか、
面白くなさそうに腕組みをしているのか、
こちらのいうことに対して熱心にメモを取っているか等など、
相手の言葉だけではなく、いわゆるボディランゲージにも着目しましょう。
これらによって、確認の妥当性を判断しましょう。
 
②お礼を忘れずに
 最後に必ずお礼をいうことを忘れないようにしましょう。
この言葉だけは必ず心を込めて、相手を見ていいましょう、「ありがとうございました」と。
 
◎コミュニケーションギャップはとかく生じるもの、最後にしっかり確認しよう。
 必ず感謝の気持ちをいって終わろう。
 
Q&A 4
 Q:IWPフェーズでは、妙に話をこじらせることなく、
相手に不満が残らないようにしながらも、
早く決めるためには、
もう最後の段階であることを踏まえて、
相手の希望をできるだけのみ、
相手に合わせていくことも必要である?
 
A:「合わせていくことも必要」という表現がやや微妙ではあります。
 「合わせていくことだけ」だといっているわけではないので、
いろいろあるやり方の1つとしてはよいではないか、
という考え方もあろうかと思います。
 しかし、あえて、きれいごとというのではなしに、
この考え方を否定したいと思います。
確かに、相手に合わせていけば話は早く決着します。
しかしそれでは、創造的な話し合いにはならず、
+αのアイデア付加に乏しい内容になってしまう確率が高いのです。
 それでも、時間的に押しているときには仕方がないではないか、
という方がいると思います。
確かに、時間的にやむなく妥協しなくてはならないことはあります。
そのときは、「やむなく」妥協するのです。「喜んで」するのではありません。
 そのために、この段階では、「相手の希望をできるだけのみ、
相手に合わせていくことも必要」なのではなくて、
根拠を明確に作ることが重要だ、と考えましょう。
「やむなく」合わせることは現実にはあるにしても、
考え方はしっかりもっておきましょう。
そうでないと、いつの間にか「喜んで」相手に合わせるようになってしまう危険性があります。答:ノー
 
ここで、フェーズとステップの説明が終わったので、
各フェーズにまたがったQ&Aをやってみてください。
フェーズを単独で考えるのはもちろん重要ですが、
各フェーズの相互関係、位置づけを確認することも大切です。
 
Q&A 5
 Q:話がトントン拍子に進んだ場合、
OGフェーズからIWPフェーズへ飛ぶ(CMフェーズとSLフェーズをカットして、決めに入る)
 ということもある?
 
A:何を根拠に「トントン拍子」と判断するのでしょうか?
 自分の考えに対して相手の反対があまり強くない、
あるいはほとんど出ない、という状況はあり得ます。
つまり、OGフェーズの「ステップ3 相手の意見を率直に聴く」のところです。
このステップで相手がイエスであったのなら、そこで交渉はめでたし、めでたしで終わります。
 イエスではないと判断したら、反対があまり強くないときも含めて、交渉は続行します。
このとき、相手のホンネはどうなのか、どの程度の反対なのかを、ヒアリングして探っていかなくてはなりません。
つまり、CMフェーズをやってみないと本当のことがわからないのです。
そして、当然CMフェーズが終わればSLフェーズに入ります。
 つまり、OGフェーズで終了するか、
次のCMフェーズへ入っていくかのどちらか2つしか、進み方はありません。 答:ノー
 
Q&A 6
 Q:CMフェーズがキチンとできないうちは、SLフェーズに入ってもあまり上手くいかない?
 
A:CMフェーズは、問題を明確にし、課題を生み出して合意するところでした。
したがって、課題が何かよくわからないのに解決策を作っても、良いものができる可能性は低いです。
 ただし、現実には課題を検討したけれどもよくわからない、
お互いに自信がもてない、
しかし、この辺だろうと妥協して、SLフェーズに入ることはあり得ます。
ただしこの場合には、良い解決策はできないだろう、と覚悟しましょう。
「それでも仕方がない」という判断を、
自分の責任のもとに下しましょう(上手くいかないときには、自分が責任を取る)。 答:イエス
 
Q&A 7
 Q:場合によっては、OGフェーズからではなく、
SLフェーズから(提案をいろいろ出すところから)交渉がスタートすることもある?
 
A:OG,CMフェーズが終わって、あらためてSLフェーズから交渉を再開する、ということはよくあります。
しかし今日が初めての交渉だというときにSLフェーズから入る、ということはありません。
必ずOGフェーズから入ります。
 OGフェーズの「ステップ2 提案説明」と
SLフェーズ「ステップ7 アイデア創出」には、
一見似ているところがあります。
いったん宿題をもち帰った場合は特に、
SLフェーズでもまずはこちらが考えた案を「提案説明」するからです。
 しかし、本質的な違いがあります。
もうおわかりだと思いますが、
課題の合意が相手とできているかいないかの違いです。
 OGフェーズの提案は、課題の合意は{いまだできていない}
 SLフェーズの提案は、課題の合意は{できている}
 です。
今日が初めてという件を話し合う場合は、
課題の合意はできていませんからOGフェーズから入ります。 答:ノー
 
Q&A 8
 Q:途中で前のフェーズに戻ることもある
(たとえば、IWPフェーズまで行ったが、SLフェーズに戻るといったこと)?
 
A:IWPフェーズでメリット・デメリットの検討をしていったら、
どの案もあまり良くないという結論になった、
というような場合は、仕方がないので前のSLフェーズに戻って、
もう一度解決策作りをやる必要があります。
 また、SLフェーズで解決策作りをやったけれど良いアイデアが出てこない。
そこで、前のCMフェーズに戻って現状の洗い出しをもう一度やる、ということもあり得ます。
 さらに、CMフェーズが思うように進まない、
課題が見いだせない。
そこで、前のOGフェーズに戻るということは、どのフェーズに関してもあり得ます。
別に「悪いこと」ではありません。
時間がかかるという点では、「望ましいこと」ではないかもしれませんが。
 なお図31には、あるフェーズが終了し、
次のフェーズに入るチェックポイントも示していますので、確認してください。 答:イエス


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